当教室では
フリマリーを小野アンナが校訂した 『小野アンナ/ヴァイオリン音階教本』
カール・フレッシュによる 『CARL FLESCH SCALE SYSTEM』
といった伝統的な音階教本の他に
単音の音程の取り方の記載がある 『Scales by Simon Fischer』
重音の音程の取り方が記載された 『Double Stops by Simon Fischer』
イザイが練習していた要素が纏められた『YSAŸE Exercices et gammes』
開放弦との重音で音階を練習する 『Ricci Left-Hand Violin Technique』
といった様々な音階教本を適宜使用して、生徒さんの技術の向上を図っています。
そして、ヴァイオリンの練習において音階練習は極めて重要なものとなっています。
なかでも
ブログ記事の『ヴァイオリンの[音階練習]で留意すべき2つのポイントとは?』にも書いたように、その鋭い演奏技巧によって広く知られた歴史的名ヴァイオリニストのハイフェッツは、繰り返し音階練習の重要性を口にしたことで知られ、初めて習いに来た学習者などには次から次に様々な調の音階を色々と弾かせたと伝えられています。
そうしたなか
『THE HEIFETZ SCALE BOOK ハイフェッツのスケールブック ハイフェッツの音階練習』は、ハイフェッツに学んだエンドレ・グラナタ氏によって編まれた音階教本で、この教本では既述のようないわばゲストに対して次々に様々な調の音階を弾かせたやり方とは違い、グラナタ氏も序文で述べているように総てのヴァイオリニストにとって必修とされる課題が載せられています。
その内容としては、様々な調での単音や重音によるスケールとアルペジオから成り、他の音階教本とは異なる点として、例えば4度の重音のスケールやフラジオレットの音階、さらには左手のピツィカートやトリルでの音階練習などが含まれている点に目を奪われる人が少なくないと思います。
ハイフェッツはかの歴史的名教師であったレオポルト・アウアーの弟子で、私も鷲見三郎先生、鷲見四郎先生と、いずれもアウアー直系の先生に長く師事しており、そうした観点でこの音階教本を初めて目にした時、この教本のある課題こそが、そのアウアー派ならではの奥義を伝える音形であることがわかりました。
その課題をまず真っ先に繰り返し復習ってみると、そこにはハイフェッツが、そして鷲見先生方がそうであった、アウアー直系ならではの響きが聴かれるとともに、それはそのようにアウアー派をアウアー派たらしめる懐古趣味的なものではなく、ヴァイオリンという楽器の根本とともに広く普遍的に学ばれるべき最重要な課題であることもわかりました。